労災の基礎知識
労働災害(労災)に遭われた方が受け取れる補償には、大きく分けて「①労災保険からの給付」と「②会社(または第三者)への損害賠償請求」の2つがあります。①だけで終わらせてしまい、②の存在を知らないまま示談してしまう方が少なくありません。このページでは、両者の仕組みを弁護士が解説します。
1. 労災保険から受けられる給付
労災保険は、業務中の事故(業務災害)や通勤中の事故(通勤災害)によるケガ・病気・障害・死亡に対して、国が保険給付を行う制度です。正社員だけでなく、アルバイト・パート・派遣社員も対象であり、会社が保険料を納めていなくても給付を受けられます。
| 給付の種類 | 内容 |
|---|---|
| 療養(補償)給付 | 治療費・入院費・薬代など。原則として自己負担なしで治療を受けられます。 |
| 休業(補償)給付 | 休業4日目から、給付基礎日額の6割(+特別支給金2割)が支給されます。 |
| 障害(補償)給付 | 後遺障害が残った場合に、等級(1級〜14級)に応じて年金または一時金が支給されます。 |
| 遺族(補償)給付 | 労働者が亡くなった場合に、遺族の人数等に応じて年金または一時金が支給されます。 |
| 葬祭料・葬祭給付 | 葬祭を行った方に支給されます。 |
| 傷病(補償)年金 | 療養開始後1年6か月を経過しても治癒せず、傷病等級に該当する場合に支給されます。 |
| 介護(補償)給付 | 一定の障害により介護を受けている場合に支給されます。 |
2. 後遺障害の等級認定が最重要です
治療を続けても症状が改善しなくなった状態(症状固定)になったとき、残った症状について後遺障害の等級認定を申請します。等級は最も重い1級から14級まであり、認定された等級によって、障害(補償)給付の額も、会社に請求できる慰謝料・逸失利益の額も大きく変わります。
たとえば後遺障害慰謝料の裁判基準の目安は、14級で約110万円、12級で約290万円、8級で約830万円、1級では約2,800万円と、等級が1つ違うだけで数百万円の差が生じます。適正な等級認定を受けるためには、症状固定の時期の判断、後遺障害診断書の記載内容、検査資料の収集などが極めて重要であり、この段階から弁護士が関与する意義が大きいのです。
3. 会社への損害賠償請求(安全配慮義務違反)
会社には、労働者が生命・身体の安全を確保しつつ働けるよう配慮すべき義務(安全配慮義務・労働契約法5条)があります。次のような事情で事故が起きた場合、会社は安全配慮義務違反(または不法行為・使用者責任)に基づき損害賠償責任を負います。
- 機械に安全カバーや安全装置が設置されていなかった
- 高所作業なのに安全帯・手すり・足場等の墜落防止措置がなかった
- 安全教育・作業手順の指導が不十分だった
- 人員不足のまま無理な作業をさせていた、長時間労働を放置していた
- 危険な作業を一人で行わせていた(監視者・補助者の不配置)
- 整理整頓・照明・換気など作業環境の整備を怠っていた
下請・派遣で働く方の事故では、直接の雇用主だけでなく、元請会社や派遣先に対して請求できる場合もあります。「自分のケースで会社に請求できるのか」は法的な評価が必要ですので、まずはご相談ください。
会社に請求できる主な損害項目
| 損害項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療関係費 | 労災保険でカバーされない治療関連の実費など |
| 休業損害 | 労災の休業(補償)給付では填補されない減収分 |
| 入通院慰謝料 | 入院・通院を余儀なくされた精神的苦痛への賠償。労災保険からは支給されません。 |
| 後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残った精神的苦痛への賠償(裁判基準:約110万円〜2,800万円)。労災保険からは支給されません。 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害により将来得られなくなった収入。障害(補償)給付との差額を請求できます。 |
| 死亡慰謝料・死亡逸失利益 | 亡くなられた場合のご本人・ご遺族の精神的苦痛への賠償と、将来収入の喪失分。 |
※労災保険から給付を受けた分は損害額から差し引かれます(損益相殺)。ただし特別支給金は差し引かれないなど、調整には専門的な判断が必要です。
あなたのケースで請求できる金額を、無料で診断します。
事故状況・お怪我の内容をお聞かせいただければ、労災保険給付と損害賠償の見通しを弁護士がご説明します。