自分にも不注意があった労災——過失相殺でどこまで減額される?
「よそ見をしていた自分が悪い」「手順を省いたのは自分だ」——労災のご相談で、こうおっしゃって請求を諦めかけている方に数多くお会いしてきました。結論から言います。ご自身に過失があっても、労災保険は原則満額もらえますし、会社への損害賠償請求も諦める必要はありません。
労災保険は、過失があっても満額支給が原則です
労災保険は労働者の過失を問わない制度です。不注意で事故を起こしても、給付が減ることは原則ありません。例外的に、故意に事故を起こした場合は支給されず、重大な過失(無資格運転や明白な規則違反など)や故意の犯罪行為による場合に一部給付が減額される(支給制限)ことがある程度です。「自分のミスだから労災は使えない」は完全な誤解です。
会社への損害賠償では「過失相殺」がある——しかし
一方、会社への損害賠償請求では、被災者側の過失の割合に応じて賠償額が減額される過失相殺があります。たとえば損害総額2,000万円で過失3割なら、受け取れるのは1,400万円です。会社側はここを最大の争点にしてきます。
しかし、労災事故の裁判例には重要な傾向があります。
人間は疲れれば注意力が落ち、慣れれば手順を省きたくなる——そうした人間の性質を織り込んで、安全装置や作業手順、教育で事故を防ぐのが会社の安全配慮義務だ、というのが判例の基本的な発想です。だからこそ、「本人の不注意」が原因に見える事故でも、安全カバーの不備や教育不足があれば会社の責任が認められ、過失相殺も限定的にとどまることが少なくありません。
過失割合を左右する事情
| 労働者側に有利な事情 | 労働者側に不利な事情 |
|---|---|
| 安全装置・保護具が用意されていなかった/形だけの安全教育しかなかった/人手不足・納期優先で危険な方法が黙認されていた/上司の指示に従った結果の事故だった/経験の浅い作業者だった | 明確に禁止された行為をあえて行った/保護具を渡されていたのに使わなかった/飲酒など職務と無関係な非違行為があった |
「黙認されていた危険なやり方」は、現場ではよくあることです。あなた一人がやっていたのか、皆がやっていて会社も知っていたのか——この違いは過失割合を大きく左右します。同僚の証言や日報などで立証していきます。
過失割合は「交渉で動く」数字です
交通事故と違い、労災事故の過失割合には確立した基準表がなく、個別事情の評価と交渉・立証次第で大きく動きます。会社や保険会社の提示する過失割合を鵜呑みにせず、裁判例に照らした適正な割合を主張することが、最終的な受取額を数百万円単位で変えることがあります。ここは弁護士の専門領域です(示談前の確認事項もご覧ください)。
事故状況をお聞かせいただければ、会社の責任を問える可能性と過失割合の見通しを率直にお伝えします。初回相談は無料です。