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弁護士コラム

労災の休業補償はいくら・いつまでもらえる?——計算方法と打ち切りへの対処法

労災の休業補償のイメージ

仕事中のケガで働けなくなったとき、いちばんの不安は「収入がどうなるのか」ではないでしょうか。労災保険には休業中の収入を補う休業(補償)給付がありますが、支給されるのは賃金の約8割までで、しかも計算のもとになる金額には残業代の扱いなど注意点があります。このコラムでは、金額の計算方法・受給期間・打ち切りへの対処法を解説します。

休業補償がもらえる3つの条件

  • 業務上または通勤によるケガ・病気の療養をしていること
  • 療養のために働くことができないこと
  • 会社から賃金を受けていないこと

この3つを満たせば、雇用形態(正社員・アルバイト・パート・派遣)を問わず受給できます。休業4日目から支給が始まります。なお「賃金を受けていない」は、まったくの無給の場合に限りません。ケガのために短時間勤務しかできず、賃金の一部だけが支払われている日でも、その差額に応じて支給されます

【判例】「もらえないのでは」と思い込む前に——受給の範囲を広く認めた最高裁判例
出勤停止処分中や休日でも支給されます(最高裁昭和58年10月13日判決)——作業中に同僚から暴行を受けて負傷した労働者が休業したところ、会社の公休日や、(負傷事故を理由とする)出勤停止の懲戒処分中の日は「もともと賃金が出ない日だから対象外」とされた事案で、最高裁は、療養のため働けず賃金を受けられない状態であれば、休日や出勤停止処分などで賃金請求権がない日についても休業補償給付は支給されると判断しました。
会社は労災認定そのものを裁判で取り消せません(最高裁令和6年7月4日判決)——会社が「これは労災ではない」と考えても、労働者に対する労災保険の支給決定の取消しを求めて訴訟を起こす資格は会社にはない、というのが最高裁の最新判断です。会社の意向で受給が覆ることはありません(詳しくは労災隠しの解説へ)。

いくらもらえる?——計算方法と具体例

休業1日につき、次の2つが支給されます。

休業(補償)給付給付基礎日額の 60%
休業特別支給金給付基礎日額の 20%
合計給付基礎日額の 80%

給付基礎日額とは、事故直前3か月間に支払われた賃金の総額(ボーナスを除く。残業代・通勤手当は含む)を、その期間の暦日数で割った1日あたりの金額です。賃金締切日(給料の締め日)がある会社では、事故発生日からではなく、直前の賃金締切日からさかのぼった3か月で計算します(労働基準法12条2項)。

計算例:直前3か月の賃金合計が92万円(暦日数92日)の場合
給付基礎日額=92万円 ÷ 92日=1万円
1日あたりの支給額=1万円 × 80%=8,000円(休業給付6,000円+特別支給金2,000円)

最初の3日間(待期期間)はどうなる?

休業の最初の3日間は労災保険から支給されません。ただし業務災害の場合、この3日分は会社が平均賃金の60%を補償する義務があります(労働基準法76条)。会社が「最初の3日は無給」と説明していたら、それは誤りです。なお通勤災害の場合は、会社にこの補償義務はありません。

いつまでもらえる?

休業補償は、「治癒」または「症状固定」(これ以上治療しても改善が見込めない状態)と判断されるまで、必要な期間支給されます。「最長○か月まで」という一律の期限はありません。

療養開始から1年6か月を経過しても治らず、傷病等級(1〜3級)に該当する場合は、休業補償給付から傷病(補償)年金に切り替わります。傷病等級に該当しない場合は、切り替えは起こらず、治癒・症状固定までそのまま休業補償給付が支給され続けます。「1年6か月で打ち切り」ではありませんので、ご安心ください。

「打ち切り」「症状固定」と言われたら

労基署や会社から「そろそろ症状固定では」と言われても、症状固定の判断は本来、医学的に主治医の意見を踏まえてなされるべきものです。まだ治療効果が出ているのに安易に応じると、休業補償が早く終わってしまうだけでなく、後遺障害の等級認定にも不利に働くことがあります。対応は「「症状固定」と言われたら」で詳しく解説しています。

残りの4割と慰謝料は、会社に請求できます

労災保険から受け取れる8割の内訳は、休業(補償)給付の60%と休業特別支給金の20%です。会社に安全配慮義務違反があって損害賠償を請求する場合、賠償額から差し引かれるのは休業補償給付の60%だけで、特別支給金の20%は差し引かれません(下の判例参照)。つまり、減収分の4割(100%−60%)を会社に請求できるということです。さらに、労災保険からは一切支払われない慰謝料も併せて請求可能です。「労災保険をもらって終わり」にする前に、一度ご相談ください。

【判例】会社への請求で知っておきたい最高裁判例
特別支給金の20%は賠償金から差し引けません(最高裁平成8年2月23日判決)——休業特別支給金は損害の穴埋めではなく、被災労働者の福祉の増進のために支給されるものだから、というのが理由です。労災から8割を受け取っていても、会社に「残り2割」ではなく「残り4割」を請求できるのはこの判例があるからです。会社の提示額で特別支給金まで差し引かれていたら、増額を求めることができます。
体調不良を会社に申告していなくても、賠償額は減らされません(最高裁平成26年3月24日・東芝事件)——メンタルヘルスの通院歴や病名は労働者のプライバシーに属する情報であり、申告しなかったことを理由に過失相殺などで賠償額を減額することは許されない、と判断されています。
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