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弁護士コラム

台風・地震などの自然災害と労災——仕事中・通勤中のケガは補償される?

台風の中の出勤のイメージ

結論からお伝えします。台風・ゲリラ豪雨・地震そのものは「天災」ですが、仕事や通勤に伴う危険が天災をきっかけに現実化したと言える場合、そのケガは労災として補償されます。「自然災害だから仕方ない」「会社は関係ない」と諦めるのは早計です。この記事では、認定の考え方(原則と例外)、台風時の通勤のケガ、そして悪天候の中で就労させた会社の責任まで整理します。

原則と例外——「天災だから労災にならない」は半分だけ正しい

労災と認められるには、仕事中の出来事であること(業務遂行性)だけでなく、ケガが業務に起因すること(業務起因性)が必要です。台風・地震・落雷などの天災は誰にでも等しく襲いかかる自然現象のため、たとえ仕事中の被災であっても「業務が原因とは言えない」として、原則として業務起因性が否定されます。ここまでが「半分」です。

しかし実務では、作業の内容・場所・環境からみて、天災の際に危険にさらされやすい事情があった場合には、「業務に伴う危険が現実化した」ものとして労災認定されます。たとえば次のようなケースです。

  • 台風接近時に屋外での作業・配達・現場業務を続けていて、強風による転倒や飛来物の直撃でケガをした
  • 高所作業・足場上の作業中に突風にあおられて墜落した
  • 強風で倒れやすい資材・看板のそばでの作業中に、その倒壊に巻き込まれた
  • ゲリラ豪雨(集中豪雨)の中で配達・屋外作業を続けていて、冠水した道路や増水した側溝の近くで転倒・転落した
  • 屋外・高所での作業中に落雷を受けた
  • 地震で、耐震性の低い建物・倒れやすい棚や機械のそばで作業していて下敷きになった

ポイントは、「その仕事をしていたからこそ、天災の危険にさらされた」と言えるかどうかです。逆に、業務と関係なく偶然被災した場合(たとえば休憩中に窓から離れた場所で偶然ガラスの破片が飛んできた等の事情がない場合)は、認定されないことがあります。境界線の判断は個別性が強いので、迷ったらご相談ください。

東日本大震災では、業務中の被災が広く労災認定されました
大規模災害時には、国が認定の考え方を示すことがあります。東日本大震災の際、厚生労働省は「天災による災害だから業務起因性がない、という予断をもって処理しないように」という通達を出し、仕事中に地震や津波で被災した場合は「業務に伴う危険が現実化したもの」として広く労災認定が行われました。大規模災害での被災は「認定されるのが基本」と考えて、まず申請することが大切です。

台風の中の通勤でケガをした——通勤災害になる?

通勤中の災害は、業務災害とは別に通勤災害として補償されます。台風時に特有の論点は次の2つです。

  • 強風・大雨による転倒や飛来物のケガ——通常の経路・方法で通勤していれば、悪天候による事故も通勤災害として認められるのが基本です
  • 迂回・経路変更——電車の運休や道路の通行止めでいつもと違う経路を使った場合でも、やむを得ない事情による合理的な経路変更なら通勤災害の保護は失われません

「いつもの道じゃなかったから労災にならない」と自己判断して申請を諦める方がいますが、それは誤解です。

台風の中で出勤・作業をさせた会社の責任

労災保険の認定とは別に、会社には従業員の生命・身体を危険から守る安全配慮義務があります。暴風警報が出ている中での屋外作業の強行、危険が予見できる状況での出勤・配達の指示など、会社が災害時の危険を軽視して就労させた結果ケガをした場合は、労災保険に加えて会社への損害賠償請求を検討できます。

実際、東日本大震災では、避難誘導のあり方をめぐって会社(使用者側)の安全配慮義務が正面から争われた裁判が複数あります。自然災害だからといって会社の責任が当然に消えるわけではなく、「危険をどこまで予見できたか」「避難や危険回避の対応が適切だったか」が問われるのです。

裁判例に見る「会社の責任」の分かれ目
◆ 責任が認められた例——東日本大震災の際、自動車教習所の教習生らが送迎バスでの帰宅途中などに、従業員が勤務中に、津波に遭って亡くなった事案で、裁判所は「消防による広報等に従って避難すべき義務に違反した」として、教習所を経営する法人の安全配慮義務違反による損害賠償責任を認めました(仙台地裁平成27年1月13日判決)。避難の呼びかけなどで危険が具体的に知らされていたのに、適切な避難をさせなかった場合には、会社の責任が問われます。

◆ 責任が否定された例——一方、銀行支店の行員らが地震後に支店屋上へ避難したものの、想定を超える津波に流されて亡くなった事案では、当時得られた情報からは屋上を超える大津波は予測できなかったとして、銀行の安全配慮義務違反は否定されました(仙台高裁平成27年4月22日判決)。自然災害なら何でも会社の責任になる、というわけでもありません。

◆ 落雷の例——高校サッカー部の試合中の落雷事故では、試合開始直前に黒く固まった暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえ、雲の間で放電が目撃されていた状況から、引率教諭には「落雷の危険が迫っていることを予見すべき注意義務」の違反があるとされました(最高裁平成18年3月13日判決)。学校事故の事案ですが、危険の「兆候」が現れているのに屋外活動を続けさせた責任という点で、ゲリラ豪雨や台風接近時の作業指示を考えるうえでも参考になります。

そして、労災保険の給付には慰謝料が含まれていません。重いケガや死亡事故では、労災保険だけではカバーされない慰謝料・逸失利益が非常に大きくなるため、会社の責任が問える事案では民事訴訟まで視野に入れた検討が必要になります。

手続きの進め方と注意点

  1. まず労災申請——「天災だから」と会社が労災申請に消極的でも、認定するかどうかを決めるのは労働基準監督署です。諦めずに申請してください
  2. 状況の記録を残す——当日の気象情報(警報の発令状況)、会社からの出勤・作業指示のメールやチャット、現場の写真は、認定でも会社への賠償請求でも重要な証拠になります
  3. 時効に注意——労災保険給付(治療費や休業補償は2年、障害・遺族補償は5年)にも、会社への損害賠償請求にも期限があります(時効の解説

なお、「台風で会社が休みになった日の給料はどうなるか」といった賃金・休業手当の問題は、労災(ケガの補償)とは別の労働条件の問題のため、この記事では扱っていません。

災害時のケガ、「天災だから」と諦める前にご相談ください

被災時の状況をお聞かせいただければ、労災認定の見込みと、会社に責任を問える可能性を率直にお伝えします。初回相談は無料です。

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