パワハラでうつ病になったら、労災認定される?——認定基準をわかりやすく解説
上司からの執拗な叱責、無視、過大なノルマ、終わらない残業——心が壊れてしまう前に、そして壊れてしまった後でも、知っておいてほしいことがあります。仕事が原因のうつ病・適応障害などの精神疾患は、労災の対象です。ケガの労災より認定のハードルは高いものの、国の認定基準に沿って準備すれば道はあります。
今つらい状況にある方は、まず治療と休養を最優先してください。手続きの期限には比較的余裕があります(時効の解説)。ご家族が代わりに相談することもできます。
精神疾患の労災認定・3つの要件
- 対象となる精神疾患(うつ病、適応障害、PTSDなど)を発病していること
- 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の原因(私生活の出来事や既往)で発病したとは認められないこと
ポイントは②です。国の「心理的負荷評価表」に基づき、出来事ごとの負荷が「弱・中・強」で評価され、総合評価が「強」になると認定されます。
「強」と評価されやすい具体例
- パワーハラスメント——殴る等の身体的攻撃を受けた/人格を否定するような精神的攻撃が執拗に行われた/それらを会社に相談しても改善されなかった
- 極度の長時間労働——発病直前の1か月におおむね160時間を超える時間外労働など
- 長時間労働との組み合わせ——「中」程度の出来事でも、月100時間程度の恒常的な長時間労働が重なると「強」に引き上げられ得ます
- 重大な事故・災害の体験——重度のケガをした、悲惨な事故を目撃した
- セクシュアルハラスメント・カスタマーハラスメント——身体接触を伴うセクハラ、著しい迷惑行為の反復など(近年の基準改正で明確化されました)
証拠の集め方——「記録」がすべてを決めます
精神疾患の労災は、出来事の存在と程度の立証が勝負です。可能な範囲で、次のものを残してください。
- パワハラ発言の録音、メール・LINE・チャットのスクリーンショット
- 日々の出来事を記録した日記・メモ(日付入りで具体的に)
- 労働時間の記録——タイムカード、PCのログ、通勤ICカードの履歴、家族へのメール時刻など
- 会社・相談窓口に相談した記録(相談日時・相手・回答)
- 受診の記録——早めに心療内科・精神科を受診し、職場の状況を医師に伝えてカルテに残す
ご本人が動けない状態のときは、ご家族が記録の保全だけでも進めておくと、後の申請が大きく変わります。
認定までの期間と、会社への損害賠償
精神疾患の労災は労基署の調査におおむね6か月以上かかります。認定されれば治療費と休業補償が支給され、休業中の解雇も制限されます(解雇制限の解説)。
さらに、パワハラの放置や長時間労働の放置は、会社の安全配慮義務違反そのものです。労災保険からは支払われない慰謝料や休業損害の差額を、会社(および加害者個人)に損害賠償として請求できます。取り返しのつかない事態に至ってしまった場合の、ご遺族からの請求も可能です。
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