労災で脊髄損傷——後遺障害等級と補償・賠償金額【ご家族の方へ】
高所からの転落、重量物の下敷き、機械への挟まれ——労災事故による脊髄損傷は、麻痺という生涯続く障害につながる、最も重い労働災害のひとつです。このページは、ベッドサイドで検索されているご家族の方に向けて書いています。ご本人がまだ治療の渦中でも、労災の等級・給付・会社への損害賠償という「これからの生活を支えるお金」の全体像を、ご家族が先に知っておくことには大きな意味があります。賠償総額は1億円を超え得る領域であり、初動の証拠と記録が結果を左右するからです。
・等級は麻痺の範囲(四肢・対・単)と程度(高度・中等度・軽度)の組み合わせで決まる
・1〜3級は労働能力喪失率100%。賠償総額は1億円を超え得る
・ご本人が動けなくても、ご家族が代理・代行して手続きを進められる
脊髄損傷の後遺障害等級——麻痺の「範囲」と「程度」で決まります
認定基準では、麻痺の範囲(四肢麻痺=両手足/対麻痺=両足または両手/単麻痺=片手または片足)と程度(高度・中等度・軽度)の組み合わせで、7段階の等級が定められています。
| 等級 | 状態のめやす(認定基準より) |
|---|---|
| 1級(1級の3) | 高度の四肢麻痺・高度の対麻痺など——食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する |
| 2級(2級の2の2) | 中等度の四肢麻痺など——随時介護を要する |
| 3級(3級の3) | 軽度の四肢麻痺・中等度の対麻痺など——身のまわりのことはできるが働くことができない |
| 5級(5級の1の2) | 軽度の対麻痺・一下肢(片足)の高度の麻痺——きわめて軽易な仕事しかできない |
| 7級(7級の3) | 一下肢の中等度の麻痺——軽易な仕事しかできない(杖や装具なしに階段を上れない等) |
| 9級(9級の7の2) | 一下肢の軽度の麻痺——歩けるが不安定で転びやすく、就ける仕事が相当制限される |
| 12級(12級の12) | ごく軽微な麻痺や、運動障害のない広範囲の感覚障害 |
※表の5〜9級は下肢(足)の麻痺を例にした認定基準の表記です。腕(上肢)の麻痺や、複数の障害が重なる場合も、同じ枠組みの中で総合的に評価されます。
押さえていただきたいポイントは3つです。第一に、麻痺の範囲・程度は身体所見とMRI・CT等の画像で裏付けられている必要があること。第二に、腰から下の馬尾神経の損傷(下肢の麻痺や排尿・排便の障害)も脊髄損傷として扱われること。第三に、3級以上では介護がどれだけ必要かも踏まえて認定されるため、後で述べる「介護の記録」が等級にも直結することです。
労災保険から受けられる給付
- 障害補償年金——7級以上は年金です(1級=給付基礎日額の313日分/2級=277日分/3級=245日分/5級=184日分/7級=131日分・毎年)。あわせて障害特別支給金(1級342万円〜)などの一時金もあります
- 介護(補償)等給付——1級・2級で介護を要する場合、常時介護で月額最大18万円超が支給されます(金額と手続きの詳細はこちら)
- アフターケア制度——脊髄損傷は症状固定後も、診察や検査・保健指導などを無料で受けられるアフターケアの対象です
ただし、これらを合計しても、失われた収入と介護の実費のすべてはカバーされません。そして慰謝料は労災保険から1円も出ません。だからこそ、次の会社への損害賠償請求が重要になります。
会社への損害賠償——1億円を超え得る領域です
会社に安全対策の不備(安全配慮義務違反)があった場合、労災保険とは別に損害賠償を請求できます。たとえば3級(働くことができない=労働能力喪失率100%)と認定された40歳・年収500万円の方の場合——
- 逸失利益——約9,200万円(年収500万円×喪失率100%×67歳まで27年のライプニッツ係数)
- 後遺障害慰謝料——約1,990万円(裁判基準。1級なら2,800万円、2級なら2,370万円)
- これに将来介護費・住宅改造費などが加わります
合計すると1億円を大きく超える水準になり得ます。もちろん労災給付の既受給分は差し引かれ、過失相殺があれば減額されますが(引かれるお金・引かれないお金)、計算の順番にも被災者に有利なルールがあります(最高裁判例により、まず過失相殺をしてから労災給付を差し引く順序とされています)。この規模の請求を会社や保険会社の提示のまま済ませてよいはずがありません。
将来介護費・住宅改造費も請求できます
麻痺が残った生活には、介護の手・車いす対応の住宅改修・車両の改造・おむつなどの消耗品と、生涯にわたる出費が続きます。これらは将来分まで含めて損害賠償として請求できます。ご家族が介護する場合でも、職業付添人に準じた近親者介護費(日額8,000円程度が目安)を平均余命の年数分請求でき、それだけで数千万円規模になります(将来介護費の計算例はこちら)。
◆屋根からの墜落・墜落防止措置の不備——浦和地裁平成8年3月22日判決(判例タイムズ914号162頁)
大工が1階屋根の作業中に約3メートル下へ墜落し、胸椎の脱臼骨折による脊髄損傷で両下肢麻痺となった事故です。裁判所は、足場や防網などの墜落防止措置を怠った工事請負業者の安全配慮義務違反を認め、賠償を命じました。「たった3メートル」でも脊髄損傷は起こります。高所作業の安全設備の不備は、会社の責任を問う最も典型的な根拠です。
◆重度の脊髄損傷で1億3,000万円超——福岡地裁昭和62年10月23日判決(判例タイムズ662号157頁)
高校ラグビー部の練習試合中の首の受傷について、学校側(県)の安全配慮義務違反を認め、約1億3,346万円の賠償を命じた事案です。労災ではなく学校事故ですが、安全配慮義務の枠組みは雇用関係と共通であり、重度の脊髄損傷では逸失利益・将来介護費を積み上げると賠償総額が1億円を大きく超えることを示す実例です。
◆住宅改造費・車いす代・そして妻の慰謝料まで——福岡地裁小倉支部昭和45年2月26日判決
脊髄損傷で下半身が完全に麻痺した被害者について、裁判所は家屋の改造費・将来の車椅子の買い替え費用・定期検診費・付添看護費を損害として認め、さらに介護を担う妻自身の慰謝料請求権も認めました(交通事故の事案)。障害と向き合うのはご本人だけではありません——ご家族の負担も、法的に評価される損害なのです。
ご家族が今すべきこと——5つ
- ① 事故状況の証拠を確保する——現場の写真、安全設備の状態、目撃した同僚の連絡先。時間が経つほど現場は変わり、記憶は薄れます。会社の災害報告の内容も確認を
- ② 画像と医療記録を押さえる——MRI・CTは等級認定の裏付けの中心です。転院時も記録が引き継がれているか確認してください
- ③ 介護の記録(介護日誌)をつける——いつ・何の介助をしたかの毎日の記録は、等級認定(介護の要否)と将来介護費の立証の両方に効く、ご家族にしかできない証拠づくりです
- ④ 会社からの示談の話は保留に——一度示談書にサインすると、後から症状が悪化しても、予想外の介護費用が発生しても、原則としてやり直しは効きません。症状固定・等級確定の前の示談は禁物です(示談前の注意点)
- ⑤ ご家族だけで抱え込まない——ご本人が動けなくても、ご家族からのご相談で手続きは進められます。労災申請・等級認定・会社への請求を一体で設計するのは早いほど有利です
まとめ
脊髄損傷の後遺障害等級は、麻痺の範囲(四肢・対・単)と程度(高度・中等度・軽度)の組み合わせで決まります。1〜3級は労働能力喪失率100%で、将来介護費や住宅改造費を含めた賠償総額は1億円を超え得ます。ご本人が動けなくても、ご家族が代理・代行して手続きを進められます。
ベッドサイドからのご相談で構いません。初回無料のご相談で、今すべきことを整理します。
よくある質問
Q.本人が入院中で動けなくても、相談できますか?
A.できます。ご家族からのご相談で方針を立てられます。お電話・オンライン面談にも対応しています。
Q.介護日誌はなぜ重要なのですか?
A.3級以上の等級認定では介護の要否が考慮され、会社への将来介護費の請求でも介護の実態が証拠になるためです。いつ・何の介助をしたかを毎日記録してください。
事故の状況と現在の症状をお聞かせください。見込まれる等級・給付・会社への請求まで、これからの道筋を丁寧にご説明します。お電話・オンライン面談に対応しています。初回相談は無料です。
※お電話・メール・LINEはご相談の予約受付です。利益相反や業務の状況により、ご相談をお受けできない場合があります。