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弁護士コラム

労災の介護(補償)給付はいくら?——支給額・手続きと将来介護費の会社への請求

労災の介護補償給付のイメージ

労災事故で重い後遺障害が残り、ご家族の介護なしには生活できなくなった——そのようなとき、労災保険には介護(補償)等給付という月々の給付があります。ただし、先に結論をお伝えすると、この給付には月額の上限があり、実際の介護の負担をすべてカバーできるものではありません。足りない分は「将来介護費」として会社に損害賠償請求できる可能性があり、重度事案ではこの部分が数千万円規模になります。この記事では、給付の金額・手続きと、会社への請求までを解説します。

介護(補償)等給付の対象になる方

対象となるのは、次のすべてを満たす方です。

  • 労災の障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金を受けていること(第1級の方、または第2級のうち精神・神経の障害/胸腹部臓器の障害の方)
  • その障害により、常時介護または随時介護が必要な状態であること
  • 現に介護を受けていること(ご家族などの親族や、ヘルパー等の介護サービスによる介護のどちらでも対象です)

※病院・診療所に入院している間や、障害者支援施設(生活介護を受けている場合)・特別養護老人ホーム等に入所している間は、施設で十分な介護が提供されているものとして支給の対象外になります。在宅介護に移ってからが本番です。

いくらもらえる?——令和8年度の支給額(月額)

区分介護費用を支出している場合親族等が介護し、費用の支出がない場合
常時介護実費(上限 186,050円一律 90,790円(最低保障額)
随時介護実費(上限 92,980円一律 45,400円(最低保障額)

※令和8年度(令和8年4月1日以降)の金額です。上限額・最低保障額は毎年見直されます。介護費用を支出していても、その額が最低保障額に満たないときは最低保障額が支給されます。

大切なポイントは2つあります。第一に、ヘルパー等に費用を払っていなくても、ご家族が介護していれば最低保障額が支給されること。「お金を払っていないから対象外」と思い込んで請求していないご家庭が少なくありません。第二に、逆に見れば、上限は月18万円台だということ。24時間の見守りが必要な最重度の事案では、実際の介護の負担はこの何倍にもなり得ます。この差を埋めるのが、後述する会社への損害賠償請求です。

請求の手続き

  1. 請求書(様式第16号の2の2)を、勤務先を管轄する労働基準監督署に提出します(障害年金・傷病年金の請求と併せて行うこともできます)
  2. 医師の診断書(初回請求時)や、介護費用を支出した場合は領収書などの費用の証明を添付します
  3. 給付は月単位で支給されます。請求権は月ごとに発生し、2年で時効にかかるため、さかのぼれる範囲には限りがあります(時効の解説はこちら)。介護が始まったら早めに請求してください

労災の給付だけでは足りない——「将来介護費」を会社に請求する

会社に安全配慮義務違反(安全対策の不備など)があれば、労災保険でカバーされない損害を会社に請求できます。重度後遺障害の事案でその中心になるのが将来介護費——これから先、生涯にわたって必要な介護の費用です。

裁判実務では、職業付添人(ヘルパー等)を利用する場合は実費相当額、ご家族による介護の場合は日額8,000円程度が目安とされ、これを平均余命までの年数分(中間利息を控除して)計算します。

計算例:ご家族による介護・日額8,000円・平均余命40年の場合
8,000円 × 365日 × 約23.1(40年に対応するライプニッツ係数・年3%)≒ 約6,700万円
※職業付添人の費用を前提にすれば、1億円を超えることもあります。
※すでに受け取った介護(補償)等給付の分は将来介護費の賠償額から控除されますが、これから受け取る予定の給付分があらかじめ差し引かれることはありません(下の判例参照)。
【判例】ご家族の介護も、将来の給付も——知っておきたい最高裁判例
家族による無償の介護でも、賠償請求できます(最高裁昭和46年6月29日判決)——娘たちの付添看護について「現実にお金を払っていないから損害はない」とした原審を破棄し、近親者の介護は現実に看護料を支払っていなくても、看護料相当額の損害として加害者に賠償請求できると判断しました(交通事故の事案ですが、労災の損害賠償にも妥当する考え方です)。「家族がやっているからタダでしょう」という会社側の理屈は、最高裁レベルで否定されています。
将来の労災給付分を、前もって差し引くことはできません(最高裁昭和52年5月27日判決・同年12月22日判決)——労災保険から将来にわたり給付が続くことが確定していても、まだ現実に受け取っていない以上、その将来分を損害賠償額から控除することは要しないとした判例です。12月22日の判決は、被災者側が会社(使用者)側に請求した事案でこの理屈を貫きました。

将来介護費は、介護の必要性・内容(見守りか、身体介護か、24時間か)を医学的資料と介護記録で立証できるかどうかで金額が大きく変わります。介護日誌をつけること、介護用品や住宅改造の領収書を残すことが、後の賠償請求の重要な証拠になります。住宅改造費・介護用品費・車両改造費なども、必要性が認められれば賠償の対象です。

このほか、重度事案では慰謝料(1級の後遺障害慰謝料は裁判基準で2,800万円)や逸失利益も高額になります。等級ごとの給付・慰謝料の全体像は「後遺障害等級1級〜14級の補償金額一覧」を、高次脳機能障害の事案は「高次脳機能障害の解説」をご覧ください。

介護が必要になるほどの重い労災事故は、ご家族からのご相談で結構です

介護(補償)等給付の請求から、将来介護費を含めた会社への損害賠償請求まで一貫して対応します。ご本人が動けない場合、ご家族だけでのご相談も歓迎です。初回相談は無料です。

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