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弁護士コラム

労災死亡事故の補償金額——遺族補償年金と会社への損害賠償

ご遺族への補償のイメージ

大切なご家族を仕事中の事故で亡くされたご遺族へ。悲しみの中で恐縮ですが、最初に結論をお伝えします。ご遺族が受け取れるお金は、「労災保険からの給付」と「会社への損害賠償」の二本立てです。労災保険の手続きだけで終わらせてしまうと、本来受け取れるはずの数千万円単位の賠償が漏れることがあります。この記事では、それぞれの金額を計算例つきで整理します。

労災保険からご遺族に支払われるもの

給付金額
遺族(補償)年金遺族数に応じて年間で給付基礎日額の153日分〜245日分(下表)
遺族特別支給金一律300万円(一時金)
遺族特別年金ボーナス分を反映した年金(算定基礎日額ベース)
葬祭料(葬祭給付)31万5,000円+給付基礎日額30日分(給付基礎日額60日分の方が高ければそちら)

※給付基礎日額=亡くなる直前3か月の賃金総額(ボーナス除く)÷暦日数。

遺族補償年金はいくら・いつまで?

受給権者+生計を同じくする受給資格者の数年金額(年間)
1人給付基礎日額の153日分
(55歳以上または一定の障害のある妻は175日分)
2人201日分
3人223日分
4人以上245日分

※妻は年齢を問わず受給資格がありますが、夫・父母・祖父母は55歳以上(60歳になるまでは支給停止)または一定の障害があること、子・孫は原則18歳到達年度末までであること、兄弟姉妹は年齢または障害の要件を満たすことなど、妻以外のご遺族には法律上の要件があります。

受け取れるのは、亡くなった方の収入で生計を維持していたご遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹の順。妻以外は年齢や障害の要件あり)です。妻が受給する場合は再婚などがない限り生涯支給が続きます。子は原則18歳到達年度末までです。たとえば給付基礎日額1万2,000円で妻+子2人(受給資格者3人)なら、年額約268万円が継続的に支給されます。

受給資格者となるご遺族がいない場合には、遺族補償一時金(給付基礎日額の1,000日分)が支払われます。

会社への損害賠償——労災保険では足りない部分

安全対策の不備や過重労働など、会社に安全配慮義務違反がある場合、労災保険ではカバーされない損害を会社に請求できます。柱は次の2つです。

① 死亡慰謝料(裁判基準)

一家の支柱(家計を支えていた方)2,800万円
母親・配偶者2,500万円
その他(独身の方・お子さんなど)2,000万〜2,500万円

労災保険からは、慰謝料は1円も支払われません慰謝料が出ない理由の解説)。この2,000万円台の慰謝料は、会社に請求して初めて受け取れるお金です。

② 死亡逸失利益(将来得られたはずの収入)

亡くなった方が働き続けていれば得られたはずの収入から、本人の生活費分(家族構成により3〜5割程度)を差し引いて計算します。たとえば45歳・年収500万円・一家の支柱(生活費控除3割)の方なら、67歳までの22年分をライプニッツ方式で現在価値に換算して概算5,500万円程度になり、慰謝料・葬儀費用(150万円程度)と合わせると賠償総額は8,000万円を超える規模になり得ます(あくまで概算です。実際の金額は収入・年齢・家族構成で大きく変わります)。

二本立ての関係——ここで損をしないための2つの知識

  1. 遺族補償年金などの労災給付は、賠償額の計算で逸失利益から差し引かれます(支給済み・支給が確定した分)。ただし遺族特別支給金300万円などの特別支給金は差し引かれません。会社側の提示が特別支給金まで控除していないか、必ず確認してください。なお、まだ支給が確定していない将来の年金分の扱いや、前払一時金の制度(その限度で会社の支払が猶予される仕組み)など、実際の調整のルールはかなり複雑です。この記事では概要にとどめますので、示談案が提示されたら内訳まで含めてご相談ください。
  2. 労災給付が慰謝料から差し引かれることはありません。労災保険には慰謝料を填補する給付が存在しないためです。「労災からもらったので慰謝料は少なくてよいはず」という説明は誤りです。

会社が提示する示談金は、この調整計算を会社に有利に組んでいることがあります。示談書にサインする前に、必ず内訳の確認をおすすめします。金額の隔たりが大きい場合は民事訴訟も選択肢になります。

ご遺族の請求を支える最高裁判例
◆ 過労自殺でも会社の賠償責任が認められる(電通事件)——恒常的な長時間残業からうつ病になり自殺した社員について、最高裁は、上司が徹夜までする状態や健康状態の悪化に気づきながら業務量を調整する措置をとらなかったとして、会社の損害賠償責任を認めました。あわせて、労働者の性格が「同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲」を外れない限り、性格を理由に賠償額を減らすことはできないと判断しています(最高裁平成12年3月24日判決)。「本人の真面目すぎる性格のせい」という会社側の主張は通らないのです。

◆ 特別支給金が差し引かれない理由——最高裁は、特別支給金の支給は被災労働者の福祉の増進を図るために行われるもので、損害をてん補する性質を有するとはいえないから、受領した特別支給金を損害額から控除することはできないと明確に判断しています(最高裁平成8年2月23日判決)。遺族特別支給金300万円が賠償額から差し引かれないのは、この最高裁判例が根拠です。

◆ 遺族補償年金は「逸失利益の元本」から差し引く(最高裁大法廷)——支給を受け、または支給が確定した遺族補償年金は、同じ性質を持つ逸失利益などの消極損害の元本との間で調整(控除)され、原則として不法行為の時に填補されたものと評価されます(最高裁大法廷平成27年3月4日判決)。どの損害から・いつの時点で差し引くかによって遅延損害金の計算まで変わる複雑なルールで、会社側の提示額の検算には専門的な計算が欠かせません。

手続きの期限(時効)に注意

  • 遺族補償給付:亡くなった日の翌日から5年
  • 葬祭料:亡くなった日の翌日から2年
  • 会社への損害賠償請求:人身損害では損害と加害者を知った時から原則5年。ただし、請求の法律構成(不法行為か、安全配慮義務違反〔債務不履行〕か)によって適用される期間・起算点は異なり、事故等の時から進行する最長20年の期間制限もあります。ここでは概要にとどめます——詳しくは時効の解説記事をご覧ください

過労死・過労自死が疑われる場合は、労働時間の立証など準備に時間がかかるため、早めのご相談が大切です(過労死ラインの解説)。労災申請の手続きの流れは死亡事故のご遺族向けの解説にまとめています。

ご遺族だけで会社と向き合わないでください
死亡事案は損害額が大きいぶん、会社側も弁護士を立てて争ってくることがほとんどです。当事務所は死亡事案・重度後遺障害事案への対応に力を入れており、労災申請のサポートから会社への損害賠償請求まで一貫してお手伝いします。四十九日を終えてから、落ち着いたタイミングでのご相談で構いません。
ご遺族が受け取れる金額の全体像を無料診断

亡くなられた方のお仕事・収入・ご家族の状況をお聞かせいただければ、労災保険の給付と会社へ請求できる金額の見通しをご説明します。初回相談は無料です。

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